ホーリーバジル(トゥルシー)と放射線被ばくに対する治療
ホーリーバジル(トゥルシー)と放射線被ばくに対する治療
(この記事も2011年1月に書かれたものを加筆修正したものです。10年も前の記事ですがその後の活動も見つけることができたので紹介します)
インドの軍事技術開発機関が、トゥルシー(ホーリーバジル)を使った放射線防護薬の開発を進めているというニュースを見つけましたのでご紹介します。
以下は、海外メディアで報じられた記事の要訳です。
【記事要約】薬用植物トゥルシー:放射線被ばくに対する治療の可能性 (2010年7月6日公表)
注目の研究において、科学者たちはトゥルシーに「抗放射線作用」があることを発見しました。これは、放射線被害に対する新たな治療薬・防護薬の開発につながる可能性があります。
インド・ニューデリーに本部を置き、軍事技術の開発を担う「防衛研究開発機構(DRDO)」の科学者グループは、聖なるバジルと呼ばれる「クリシュナ・トゥルシー」(Ocimum tenuiflorum L. / 和名: カミメボウキ / サンスクリット名: Kṛṣṇa Tulasī)が、放射線障害に対して有効な薬理特性および強力な抗酸化特性を有することを確認しました。
※トゥルシー(シソ科の芳香植物)には、インドで主に栽培されている2つのタイプがあります。緑色の葉を持つ「シュリ(ラクシュミ)・トゥルシー」と、紫色の葉を持つ「クリシュナ・トゥルシー」です。
DRDOのシニア科学者は、「この植物とその葉の抽出物は、抗放射線薬の製造や研究に使用できます。すでにこの分野での研究が進行中です」とコメントしています。
ハーブが持つ抗放射線特性 初期試験(第1段階)において、科学者たちはクリシュナ・トゥルシーが核放射線被ばくに対する治療・防護効果を持つことを発見しました。これを受け、DRDOは臨床試験を含む第2段階の研究開発へと進む承認を得ています。
DRDOの研究開発チーフであるW. セルヴァムルシー(W. Selvamurthy)博士は、研究結果について次のように語っています。
「私たちは放射線から身体を守る『放射線防護剤(Radioprotector)』を模索しています。しかし、現在利用できる唯一の合成化学防護剤(アミフォスチン等)は、それ自体が非常に強い毒性を持っています。
そこで天然のハーブに着目して実験を行った結果、抗放射線薬として開発し得る3つの植物を発見しました。トゥルシーはそのうちの1つです」
他の2つの植物は、シーバックソーン(サジー)と、高山地帯に自生するヒマラヤメイアップル(Podophyllum hexandrum Royle / 和名: ヒマラヤハッカクレン / サンスクリット名: Giriparpaṭa)です。
「高地植物は厳しい紫外線(放射線の一種)に晒されて育つため、一種の防御免疫を獲得しています。しかし、効果の高さや原料の調達・確保の面においては、トゥルシーが最もすぐれています」とセルヴァムルシー博士は述べています。
さらに、DRDO傘下の「核医学・連合科学研究所(INMAS)」は、インド独自の核放射線解毒・防護剤の開発を計画しています。
がん治療(放射線療法)への応用 軍事目的だけでなく民間医療への応用について、セルヴァムルシー博士は次のように強調します。
「このハーブ医薬品は、放射線治療や化学療法を受けているがん患者の副作用軽減にも活用できます。従来のがん放射線治療は、悪性組織(がん細胞)を破壊する一方で、周囲の正常組織まで傷つけてしまう課題がありました。しかし、トゥルシー由来の成分はこの副作用を防ぐことが分かっています」
研究者によると、トゥルシーは放射線治療中に発生する有害な活性酸素(フリーラジカル)を強力に消去します。 原料が豊富で安価に調達できるため、将来的にカプセル剤などとして手頃な価格で実用化されることが期待されています。
3. その後の研究・実用化の経過(10年余りの追跡情報)
2010年当時のこの発表の後、DRDOおよびINMAS(核医学・連合科学研究所)が進めた研究のその後の展開は以下の通りです。
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研究の進展と臨床・前臨床データ: INMASおよびDRDOの研究チームは、トゥルシー(Ocimum sanctum / O. tenuiflorum)に含まれるオリエンチン(Orientin)やヴィセニン(Vicenin)といった水溶性フラボノイド成分が、遺伝子(DNA)の損傷防止や造血系の保護に寄与することを学術論文等で継続発表しました。
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製品開発の現状: DRDOは、同様の天然物放射線防護研究においてシーバックソーン(Sea Buckthorn)ベースの製剤などを軍用補給品や民間向け製品(サプリメント・機能性飲料)として優先的に商品化・標準装備化を進めました。 トゥルシー由来の単体「放射線防護医薬品(処方薬)」としての完全な承認・製品化には至っていませんが、がんの放射線療法における「補完医療用アジュバント(副作用軽減サプリメント/ハーブ製剤)」や、複合ハーブ処方(Ayushハーブ製剤)の一環として研究・活用が継続されています。